-第2章- 返報性 営業におけるギブアンドテイクの魔力
こんにちは。健四郎です。
前回から始めました連載シリーズ、"現役営業マンが「影響力の武器」を読んで学ぶ"の第2章を更新致します。
※影響力の武器[第3版]なぜ、人は動かされるのか-ロバート・B・チャルディーニ-を読み解いていきます。
※思いっきりネタバレします。
第2章 返報性
この章の話題は返報性についてです。
人間文化の中で最も広範囲に存在し、最も基本的な要素となっているルールです。
これは、他人から何か与えられたら自分も同じ様なやり方でお返しをしなければならないというルールで、これにより将来への義務感が生まれる事で社会にとって有益な持続的人間関係や交流、交換が発達してきたと著書にはあります。
このルールの営業への応用で最も有名なのが著書でも触れられている「ドアインザフェイス」でしょう。
このテクニックは、最初に相手が拒否しそうな高い要求をして、それを拒否させた上で譲歩として本当に受け入れさせたい、最初に比べると負担が少なく'見える'要求をするという手法です。(この場合は譲歩が返報性ルールの引き金)
営業マンなら誰しもが使用した事があるテクニックではないでしょうか。
特に値段交渉のシーンで、最初に大きな金額から初めて、徐々に譲歩する形で目標金額に摺り合わせるという使われ方が多いと思います。
しかも、交渉相手も最初に提示された値段と比べると安くなるため、コントラストが効いて納得感のある値段に見えますし、「値切った」という感覚をもつため交渉に対する満足度も高く、後から恨まれる事も少ないという営業として理想的な手法です。
また、値段交渉の場面以外でも、スーパーの試食やアンケートでの回答者特典、訪問販売での無料点検など多岐にわたる活用がなされています。
では、一消費者としてこの返報性のルールを利用した営業の手練手管から逃れるすべはないのでしょうか。
それが実は、あるのです。
それは著書に紹介されていますが、その状況を「定義し直す」ことです。
この営業における返報性のルールは、相手から受けた恩恵(無料の情報、物、要求の譲歩など)に対して、相応のお返しをしなければならないという心理を販促に利用しています。
この相手から受けた恩恵を「相手の善意による恩恵」から「販促のための手法としての恩恵」に自分の中で再定義してしまうのです。
そうする事で、心を過度に痛める事なく相手の要求をはねつける事が出来るようになります。
実際営業の現場でも、一度顧客が冷静になりこのモードに入ると崩すのは容易ではありません。
ついつい営業トークに乗せられてしまいそうになったら、一度冷静に相手の要求を客観的に妥当かどうか検討する余裕を持つようにしましょう。
逆に営業マンの立場として言うと、顧客にこのモードに入らせないようにすることが肝心です。
そのために商品説明だけでなく、普段からプライベートの雑談などから共通点を探り出し、自分に対する好感度を高める努力をし続けましょう。
そうする事で、冷静に営業の手練手管だと割り切る事が難しくなっていきます。
また、コントラストが強く出るからといって、最初の当て馬要求を高すぎるところに設定しない事も肝要です。
この返報性のルールを利用した営業手法は、よほど世間知らずでない限り経験則的に知っている人の方が多いです。
そのため、明らかにそれとわかる様な高い要求から入ると、誠実性を疑われて信頼を得る事が困難になります。
そうなれば、そもそも交渉の場に臨む事すら出来なくなるので、TPOに合わせて無理のない範囲の要求から入る程度にしましょう。
このように適切に使用していけば、営業マンとしても、顧客としても納得度、満足度の高い交渉が出来るのではないでしょうか。
さて、次回は第3章「コミットメントと一貫性」について学んでいきます。