-第7章-希少性 顧客の背中を押す見えざる手
こんにちは。健四郎です。
最近車を買う事になったので色々中古車などを見て回ってます。
その時にちょうどこういったブログで影響力の武器を取り上げてる事もあって、営業マンがどんなトークをするか注意して聴いています。
普段営業掛ける側なのでそういう言い回しあるんだ、とかこの言い方はあまりよくないな、とか聴いてると勉強になるし楽しいのですが、車のスペックよりそちらの方が気になって中々決められないですね。(笑)
今回取り上げる"希少性"の影響力の武器もよく使われておりました。
中古車のような一点もの、直接比較が効きにくいものは特に有効な影響力の武器ではないでしょうか。
それでは、今回もよろしくお願いします。
※影響力の武器[第3版]なぜ、人は動かされるのか-ロバート・B・チャルディーニ-を読み解いていきます。
※思いっきりネタバレします。
第7章 希少性
数が少ないもの、珍しいものは価値がある。
それは子供から大人まで直感的に理解している普遍の心理ではないでしょうか。
営業現場の例だけではなく、普段接する広告などでもよくこの希少性の原理を利用したコピーを見かける事があります。
例えば僕は晩酌を家でするときは缶ビールをよく飲むのですが、冬の時期になってくると「冬のどごし」とか「冬物語」とかつい季節限定ビールを買ってしまいます。
もちろん、バカ舌なので違いが分かりませんが、気づいたらそういった「季節限定」ものを買っています。
これは、今の時季しか味わえないという希少性を用いた承認誘導テクニックです。
他にも近くの街の靴屋さんで、年中在庫一掃、一斉値引きをしているお店があります。
これも、お値打ち価格で買えるのは今しかないという承認誘導テクニックです。
このように、街中を歩けば必ず一回は希少性の原理を用いたコピー、売り文句に出会う事が出来ます。
しかも、特筆すべきはこの希少性の原理を用いた承認誘導テクニックは、消費者がそれと分かっていても影響されるところにあるのではないでしょうか。
特に「他の人もその商品を買っている」という事実を目の前で認識させられる状況においては、非常に強力な武器となります。
著書ではロバート博士の弟、リチャードが車の中古車販売をする際のエピソードで例示されています。
リチャードがうまく行ったのは、中古車を安値で仕入れ、それを新聞広告に載せて転売するのですが、その際にお客さんが現車確認にくる時刻をわざと被らせる事です。
そうすることで、顧客は実際に自分意外の車を購入しようとしている「競合者」を目の当たりにする事になります。
するとその中古車が実際よりも価値が"高く"見えますし、他の購入希望者がいるというプレッシャーが決断までの時間を縮め、他の車を見て回るという選択肢を奪います。
ここまで要素が重なると、冷静に品定めすることは困難を極めます。
実際リチャードは、週末の数時間そうしてバイトするだけで自活に十分な収入を得て、あとは学生としての勉強に時間を充てる事が出来たそうです。
顧客の背中を押す希少性の力
先の例でみたように、営業におけるクロージング段階で希少性の影響力は非常に強力な承認誘導の手段となりえます。
商品説明がうまく、顧客の反論に理論的に答える営業マンは多く居ます。
顧客と友達付き合いを重ね、人間関係で売っていく営業マンも多く居ます。
しかし、そういった営業マンでも購入の手前で迷っている、決め手に欠けている顧客の背中を上手に押す事ができなかったりします。
僕も新卒の頃、頑張って勉強して顧客の質問にすべて切り返しが出来る様になりました。
しかし、売れるどころか顧客から生意気なやつと思われて全く売上は伸びませんでした。
次に顧客と友達の様に、仲良くなる事も意識しました。
しかし、逆に顧客から「ちょっと今月厳しいから勘弁してよ。来月には買うからさ」と近い関係を利用して言われてしまったり、規定以上の値引きを行う様に求められてしまう事がありました。
どちらの要素も営業として売上を上げるにはある程度必要な事ですが、こういった努力だけでは他の営業マンを超える売上を上げ続けるのは難しいと感じました。
そこで売れる先輩をよく観察していると、このクロージングが非常に巧い事に気づきました。
抽象的な表現になりますが、巧い先輩はあくまで顧客に選択権を持っていると感じさせながら、イヤラシさを感じさせずに最後の一押しをしていくのです。
もちろん、クロージングのパターンはひとつではないですが、この希少性の影響力を利用したクロージングは、そういったイヤラシさを感じさせにくい承認誘導のテクニックのひとつではないかと思います(リチャードの中古車販売の例は少しイヤラシい感じもしますが・・・)
消費者の立場での対策
営業の立場から見ると、今まで述べてきた様に希少性の力は非常に強力です。
これから年末ですので、ニュースで福袋に群がるおばちゃんたちを見る機会があると思いますが、いつ使うのか分からない様な品を大量に抱えて、満足そうにしている顔を見る事があると思います。
極端な状況での例かもしれませんが、明日は我が身です。
自衛手段は考えておいた方がいいでしょう。
著書には防御法として商談中興奮が高まったのを感じたら「本当にこの商品は自分にとって必要なものなのか」「希少だからといって価値が高い訳では必ずしもない」と自問自答するという様な事が書かれています。
ただ、これだけではこの希少性の魔力に立ち向かうには不十分ではないかと思います。
福袋のおばちゃんを思い出すまでもなく、この希少性の力は消費者がそれと分かっていても強力に影響を受けるものだからです。
もう一歩踏み込んで対策をとるならば、買い物にいく前、商談にいく前に自分の中で最低ラインを決めてから望むのが対策になりうるのではないでしょうか。
(例えば、どんなに魅力的に見えても、金額は1万円までと予算を決めていくなど)
そしてそれを他の誰か、第三者に宣言していくようにすると、ストッパーがかかりやすい様になります。
営業目線から考えても、クロージングされる段階で冷静になる事が何よりの対策です。
このように希少性の力の強さを知り、自分もその影響を受けることを考慮した上で対策を行う事が、より満足度の高い買い物、商談をする手助けになるのではないでしょうか。
次回は、第8章てっとり早い影響力ーいよいよこのシリーズの最終記事です。